睡眠時無呼吸症候群にオススメの鼻うがいとは?正しいやり方と注意点
睡眠時無呼吸症候群は、英語でSleep Apnea Syndrome、略してSAS(サス)と呼ばれている疾患で、夜間の睡眠中に無呼吸といびき(低呼吸)を繰り返すのが特徴です。
日本の研究では、中年男性で睡眠時に1時間あたりに発生する無呼吸、低呼吸の回数が5回以上の方は24%、15回以上の方は6%、30回以上の方は2%であるという結果が出ています。その中で昼間眠気を伴う方は4%といわれ、男性の方が女性と比べて2〜3倍多いといわれています。
この疾患は睡眠中に呼吸が止まるだけでなく、心臓や脳、血管にまで負担をかけるため、睡眠時無呼吸症候群を患ってしまうだけで、実は高血圧症や脳卒中などの循環器系の疾患まで併発する危険性が高まってしまいます。
無呼吸の回数が多くなるにつれ、リスクは高まっていくのですが、その一方で睡眠時無呼吸症候群をきちんと治すことで、それらのリスクを減らせる可能性があることも事実です。
そのため、家族や周囲の人に寝ているときのいびきや無呼吸を指摘された経験のある方は、早急に医療機関を受診し、治療を開始する必要があります。
また、口呼吸も睡眠時無呼吸症候の原因のひとつであるため、病院で行う治療と並行して自宅で簡単にできる鼻うがいを行い、早期の改善を目指しましょう。
鼻うがいは、睡眠時無呼吸症候群だけでなく感染症予防や虫歯、歯周病などの口腔内のトラブルにも効果を発揮するセルフケアです。よく鼻うがいではよくならないなどという声を耳にしますが、そのような方は正しい方法で鼻うがいを行えていない可能性があります。
本記事では、睡眠時無呼吸症候群にオススメの鼻うがいについて詳しくご紹介します。
睡眠時無呼吸症候群について
睡眠は、単に日中に働いたり家事をしたりするためのエネルギーを補うものではありません。心や身体の疲れをとり、明日への活力を充足するのに欠かすことのできない行為です。
人間は1日の終わりに十分な睡眠をとれれば、翌日も昼間に眠気を感じることなく快適に過ごせます。しかし、睡眠時無呼吸症候群になってしまうと熟睡できないため、一日中眠気や倦怠感に襲われ、トラブルや事故を招きかねません。さらに最悪の場合、突然死してしまう可能性もあります。
ここでは、そんな危険な疾患である睡眠時無呼吸症候群について詳しくご紹介します。
原因
睡眠時無呼吸症候群は、呼吸の際に空気の通り道である気道が部分的または完全に閉塞してしまうために起こる疾患です。
例としては、太っている人が仰向けの姿勢になると、気道が狭まり呼吸しにくくなることなどが挙げられます。通常このときいびきが発生するのですが、太っていることが理由で気道が一時的に潰れてしまうと、無呼吸の状態になってしまうのです。
以下は、睡眠時無呼吸症候群を起こしやすい方の例です。
- 肥満の方
- 高血圧の方
- 糖尿病の方
- 高脂血症の方
- 首が太くて首周りに脂肪がついている方
- 下顎が後ろの方に引っ込んでいる方
- 舌の付け根が大きい方
- 鼻詰まりのせいで口呼吸の方
リスクがあるのは肥満の方だけではありません。体型が影響して睡眠時無呼吸症候群を招いてしまうケースもあります。とくに東アジアの人は、もともと顎が小さく気道も狭い人が多いため、肥満でなくても無呼吸が生じやすいのです。
また、鼻のトラブルを抱えている方や口の筋肉が衰えている方などは、口呼吸になりやすい傾向にあります。口呼吸になると舌の位置が後ろに下がり、気道が塞がれて睡眠時無呼吸症候群を起こしやすくなってしまうためです。
このほかには、脳からの呼吸するための指令が筋肉に届かないなどの原因があります。しかしこの場合は脳の呼吸中枢が原因であるため、いびきをかきません。
症状
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時に10秒以上の無呼吸といびきを繰り返すのが特徴です。呼吸は一時的にでも止まってしまうと、血中の酸素不足が起こり、十分な睡眠を取れなくなってしまいます。そのため、しっかりと身体を休められずに慢性的な睡眠不足に陥ってしまう可能性があるのです。
以下は、睡眠時無呼吸症候群で起こる可能性のある症状です。
- 慢性的な睡眠不足
- 集中力の低下
- 日中に強い眠気を感じる
- 記憶力や集中力の低下
- 気分の落ち込み
- うつ状態になる
- 勃起障害
- 夜間覚醒
さらに症状が進むと高血圧や不整脈、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こす可能性も増加し、命に関わる事態を引き起こしかねません。
検査と診断
睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度を調べ、診断を確定するためには十分な検査をする必要があります。一般的には、一晩入院してポリソムノグラフィー(PSG)検査という精密な検査端子を体に取り付けて眠る検査を行い、睡眠時の状態を調べます。
以下はPSG検査で調べる項目です。
- 脳波
- 筋電図
- 心電図
- 呼吸と血液中の酸素
これらを測定し、睡眠障害の有無についての診断を行います。
ほかにも、指先と顔にセンサーをつけ血液中の酸素と呼吸の状態を測定する簡易検査や、指先にセンサーをつけて血液中の酸素の状態と脈拍数を測定する、パルスオキシメーターという検査などがあります。
在宅で簡単に行える簡便な検査方法もありますが、最適な治療を行うためには病院で検査を行った方がよいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群にオススメの鼻うがいとは
上記でもご紹介したとおり、無意識のうちに口で呼吸する口呼吸は睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつです。
通常は口で息をした方が楽に呼吸できますが、鼻になんらかのトラブルを抱えている場合、口で呼吸した方がましだと無意識に口呼吸に移行してしまうことがあります。
苦しいからといって口呼吸をしていると、鼻呼吸のときよりもさらに咽喉が狭くなり、舌の付け根が落ち込んでしまうため、無呼吸になってしまうのです。
そんな方にオススメなのが、鼻のトラブルを解消する鼻うがいです。鼻うがいは、文字通り鼻の穴から洗浄液を入れ、鼻の奥に入り込んでいるウイルスや分泌された鼻汁を洗い流します。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群に鼻うがいをオススメする理由と正しいやり方、注意点をご紹介します。
オススメする理由
睡眠時無呼吸症候群の治療において、普段の睡眠中に口呼吸から鼻呼吸へ導くことはとても重要です。鼻呼吸へ移行させるには、鼻うがいやあいうべ体操、口をテープで閉じて眠る方法などがあります。
その中でもとくに有効とされているのが鼻うがいです。鼻うがいは、鼻の中を綺麗に洗浄し鼻腔内に付着している異物やウイルス、アレルギー物質などを取り除くことで鼻詰まりを解消し、口呼吸から鼻呼吸へ移行します。
鼻呼吸へ移行させると舌の位置が正常に戻り、塞がれていた気道が開くので、鼻うがいは睡眠時無呼吸症候群を改善する方法としてオススメです。
正しい鼻うがいのやり方
鼻うがいは、喉をガラガラさせるのではなく鼻の中をうがいのように洗い流す方法です。正しい方法で行うと、鼻の不快感を解消するだけでなく、睡眠時無呼吸症候群の改善にも効果を発揮します。
鼻うがいをはじめて行う方は、最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れるとスムーズに行えるようになります。
以下が正しい鼻うがいのやり方です。
- 一度沸騰させた200〜300ccのぬるま湯に、洗浄液のもとを入れる
- 鼻うがい用の洗浄器具を用意する
- 作った洗浄液を洗浄器具に移して先端を鼻に差し込む
- 体を少し前に倒し顔を斜め下に向ける
- 「あー」と声を出しながら洗浄器具に力を加えて洗浄液を鼻に流し込む
- これを数回繰り返す
- 反対側の鼻も同様に洗浄液を鼻に流し込む
慣れないと服が濡れてしまう場合もあるので、最初はお風呂で行うとよいでしょう。温かい浴室で鼻うがいをすると、体が温まって鼻が通りやすくなる効果もあります。
鼻うがいを行う際の注意点
鼻うがいを行う際は、洗浄液のもとを溶かしておこなうのがオススメですが、自分で洗浄液を作ることも可能です。
自分で洗浄液をつくる際には、体液と同じ浸透圧である塩分濃度0.9%の生理食塩水を作るようにしましょう。
プールで鼻に水が入ったとき、ツーンとした痛みを感じた経験はありませんか?それと同様に、真水で鼻うがいを行うと浸透圧の違いから鼻の中が痛くなってしまいます。その痛みを防ぐためには、体液と同じ浸透圧である生理食塩水を使用する必要があるのです。
ほかにも、鼻うがいを行う際には以下のような点に注意しましょう。
- 鼻に洗浄液を流し込んでいるときはつばを飲み込まない
- 鼻に洗浄液を流し込むときに大きく上を向かない
- 鼻うがいは1日に1〜2回程度
- 鼻うがいが終わってすぐは鼻を強くかまない
鼻うがいは、正しい方法で行わないと中耳炎など別の病気を招いてしまう恐れがあります。必ず注意点を守り、正しい方法で行うようにしましょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群についてと、睡眠時無呼吸症候群にオススメの鼻うがいについて詳しくご紹介しました。
睡眠時無呼吸症候群は、日中の眠気や倦怠感を引き起こす厄介な疾患ですが、きちんと治療を行えば必ずよくなります。
睡眠時無呼吸症候群を改善する治療には、一般的にCPAP(シーパップ)療法と呼ばれる鼻マスクを装着し、マスクに繋がった機械から空気を送り込むことで呼吸を改善させるものや、専用のマウスピースを装着して呼吸を改善させる方法があります。
このような病院での治療と並行して今回ご紹介した鼻うがいでセルフケアを行うと、より早く症状を改善させられるので、日常的に鼻うがいを取り入れるのがオススメです。
睡眠時無呼吸症候群にお悩みの方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。